インテリアデザインはなぜ“落ち着く空間”をつくれるのか

前回、灯りがもたらす安心感についてお話ししましたが、灯りの話をすると必ず着地点として気になってくるのが「インテリアデザイン」です。

家具の高さ、色、素材、配置、空間の“抜け”――私たちは空間に入った瞬間に、その部屋が落ち着くかどうかを無意識に判断しています。今回はその「落ち着きの正体」を、インテリアという視点から深掘りしてみます。


家具の“高さ”が空間の安心感を決める

部屋に入って「なんか落ち着くな」と思うとき、多くの場合、家具の高さが視界を圧迫しないラインで統一されています。特に日本の住宅では、

  • 背の低いソファ
  • ローテーブル
  • 視線を遮らないオープンシェルフ

こうした“目線を下げる家具”が空間の落ち着きをつくりやすいです。逆に、背の高い収納や大型家具ばかりだと、知らないうちに 圧迫感 を生んでしまいます。

視界の抜けが生まれるだけで、空気の流れが軽やかに感じられ、人は自然にリラックスできるのです。


“素材感”は心理を静かに整えてくれる

インテリアにおいて、素材の力は想像以上に大きいです。特に、木・麻・リネン・陶器・植物・ファブリックといった自然素材は、人の心理を穏やかに整える効果があります。

なぜかというと、人の脳は自然物を見るだけでストレスを下げる性質があるためです。対して、光沢の強い樹脂や金属が多すぎると、冷たさが強調され、空間の安心感が損なわれることがあります。

“触れたくなる素材”が多いほど、安心感は増す――これは覚えておいて損はありません。


色彩の“温度”が空間の雰囲気を左右する

色の温度、つまり 暖色・寒色のバランス は、空間の印象を大きく左右します。

一般的に、暖色系(ベージュ・ブラウン・オレンジ)安心・ぬくもり・くつろぎを、寒色系(ブルー・グレー)集中・清潔感・広さをもたらします。

ただし「落ち着く=暖色で統一」は単純な方程式ではありません。用途に応じて色温度を設計することが重要です。用途に合った色彩温度を選ぶことで、行動と空間が一致し、自然に落ち着きを感じられます。


動線の“邪魔されなさ”が心の静けさを生む

インテリアで見落とされがちなポイントが「動線」です。どれだけ見た目が良くても、日常の動作で小さなストレスが積み重なると、落ち着きは失われます。

例えば、椅子の背に足をぶつける、引き出しを開けるたびに家具をよける――こうした 動作のノイズ は無意識のストレス源になります。

動線の悪さ=気づきにくいストレス源。逆に、動線がスムーズだと住み心地が劇的に改善されます。


「余白」が空間のデザインを完成させる

結局のところ、インテリアの落ち着きは“余白の量”で決まることが多いです。余白は贅沢であり、安心そのものです。

部屋に余白があると、

  • 呼吸がしやすくなる
  • 掃除がしやすい
  • 見た目が静かになる
  • 生活のストレスが減る

余白は最高のインテリアデザインだと言ってもいいでしょう。

インテリアは“心の環境デザイン”である

照明の話から始まり、今回はインテリアに視点を広げましたが、最終的に辿り着くのは一つの結論です――

インテリアとは、心が落ち着ける“環境”をデザインすること。家具の高さ、素材の質感、色彩の温度、動線の滑らかさ、余白の量。これらが組み合わさって初めて、本当の“居心地”が生まれます。

今いる空間がなんだか落ち着かないと感じたら、まずは家具を減らすか、光の色を変えるか、素材を一つだけ自然物に替えてみてはいかがでしょうか。

 

今回はこの辺で。また次回お会いしましょう。

Soma

好奇心を刺激するデザインを。

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