「別に嫌いじゃないけど、なんとなく話しかけづらい」
「威圧感があるわけじゃないけど、つい距離を取ってしまう」
そんな“話しかけにくい人”が、職場や学校、
日常のさまざまな場面に一人はいるのではないでしょうか。
一方で、「話しかけやすい人」と「話しかけにくい人」の違いは、
必ずしも性格や発言内容に限らないというのも面白いところです。
今回は、どんな環境にも起こりえる
「人の印象はなぜこうも違って見えるのか」という問いから話をしてみましょう。
話しかけにくさの正体は、“情報設計”のミス?
まず、話しかけやすい人と話しかけにくい人の違いについて、思いつく限り挙げてみましょう。
- 表情が柔らかいか、無表情か
- 視線を合わせてくれるか、ずっとPCを見ているか
- 相づちを打つタイプか、黙っているか
- 身体の向きが開いているか、閉じているか
- 声をかける隙があるか、ないか
…等々、実にさまざまです。
そしてここに共通するのは、「話しかけてもいいよ」というサインが出ているかどうかという点です。
たとえば私たちがウェブサイトを作るときも、
ユーザーに
「次に何をすればいいか」
「ここを押せば目的が果たせる」ことを、
視覚的に伝える設計を行います。
それと同じように、人の“話しかけやすさ”も、
ある種の情報設計の結果と考えることができるのではないでしょうか。
「デザインされていない空気」が生む距離感
興味深いのは、話しかけにくい人の多くが
「話しかけないで」と思っているわけではない、ということです。
- 「集中してるように見えたかも」
- 「疲れてて表情が硬かったかも」
- 「なんか怖かったかな…?」
これはつまり、「相手がどう受け取るか」まで設計できていなかったという状態です。
意図せず発信している“無言のデザイン”が、想定と違う印象を生んでいる。
この現象は、たとえばデザインで「情報がごちゃついてる」だけで信頼感が失われるのと似ています。
情報はある。でも、構成されていないから伝わらない。むしろ距離を生む。
つまり、見た目・佇まい・空気感といった非言語的要素は、立派な「印象設計」と言えます。
“話しかけられやすさ”をデザインする
では、どうすれば「話しかけられやすい人」になれるのでしょうか?
答えはシンプルですが、実践は少し繊細です。
- 定期的に視線を外す・手を止める
→ 会話の“割り込む余地”を相手に与える - 肩の力を抜いた姿勢を取る
→ “常に戦闘モード”だと緊張感が伝わる - 「今、大丈夫です」感を表情で伝える
→ アイコンタクトや軽い笑顔はその合図になります
これは、どれも「人の動作における余白のデザイン」だと捉えることができます。
…会話してない時までそこまで考えて動けないって?
まぁ、確かにそれも一理あるでしょう。
そんなに細かな部分まで考えなくても、普段から小さなコミュニケーションを積み重ねておくこと、
つまりはある程度の信頼を得ていれば、“声をかけやすい空気づくり”には効果的ですよ。
・「お疲れさまです」の一言
・エレベーターでの軽いあいさつ
・雑談とまではいかないけど、ちょっとした声かけ
これらは、まるでナビゲーションのような存在です。
話しかけること自体の“ハードル”を、日頃から低くしてくれます。
「無意識の印象」を、意識して設計する
私たちは普段、グラフィック、映像、Web――さまざまな“見せ方”を通じて、
「相手にどう伝わるか」を常に考えながら設計しています。
では、いざその“見せ方”を、人間関係に応用するとなるとどうでしょうか。
とはいえ、自然体のままでいたいという気持ちも当然あるでしょう。
わざとらしく演じる必要はありません。
寧ろわざとらしくなってしまう程であれば、
却って距離を生んでしまうことだってあるでしょう。
ただ、「自分がどう見られているか」にほんの少し意識を向けることは、
その場の空気を和らげ、人との距離を縮めるうえで効果的です。
職場も、デザインも、空気も。
すべては“設計”次第なのかもしれませんね。
この話が、誰かの“話しかけられやすいデザイン”のきっかけになれば幸いです。
今回のお話はこの辺で。またお会いしましょう。