人はなぜ“好きな数字”を持っているのか?

皆さまには「好きな数字」がありますか?

3が落ち着く。
7が縁起良く感じる。
あるいは誕生日の「2」と「5」には何となく親しみがある――そんなふうに、
特に理由はないけど、なんとなく好きという数字をひとつやふたつ持っている方は、案外多いのではないでしょうか。

冷静に考えてみると、数字というものは基本的にただの記号です。
1は1個、3は3個。数学的な意味しかないはずなのに、
なぜか私たちはそこに「意味」や「感情」さえ見出してしまう。

今回はそんな、“好きな数字”を持つ理由と、その不思議な心理について考えてみたいと思います。

 

“意味のない数字”が“意味のある記号”に変わるまで

まずは周囲に「好きな数字ある?」と尋ねてみてください。
「7が好き。ラッキーセブンでしょ」
「4がなんかしっくりくる」
「ゾロ目が好き。特に8が3つ並ぶと気分がいい」
といった答えが返ってくることと思います。

ポイントは、ほとんどの人が理由を明確に語れないということです。
「なんか良くない?」「昔からそうだったから」
多くの人にとって、好きな数字は“なんとなく”始まった関係性なのです。

ですが、その“なんとなく”は積み重なると、確かな「記憶」に変わっていきます。

たとえば――
小学校で使っていたロッカーの番号が「12」だった
好きな選手の背番号が「9」だった
昔飼っていた猫の名前が「ミー(3)」にちなんでいた

そんなふうに、数字はいつの間にか私たちの個人的な記憶のタグとして機能し始めます。
そこにストーリーが宿ることで、ただの記号だった数字は自分だけのシンボルになるのです。

 

数字に「意味」を感じる脳のクセ

脳科学的にも、人は「意味のなさそうなものに意味を与えたがる生き物」と言われています。
曖昧な情報に秩序を見出すことで、安心したり、世界を理解したような気持ちになれるのだそうです。

たとえば「13」が不吉とされるのは、西洋における宗教的背景や歴史的事件が由来ですが、
その“意味づけ”が長年にわたって文化に定着することで、私たちの行動や感情にまで影響を与えているのです。

つまり、数字は「情報」であると同時に、「イメージ」でもある。
それぞれの数字に、私たちは勝手に“性格”を見出しているとも言えるかもしれません。

1=はじまり2=対(ペア)3=安定4=不吉5=自由6=バランス7=神秘8=無限9=完成…。
このような“数の性格診断”めいた感覚、なんとなく馴染みがありますよね。

 

 

無機質な数字が、人を動かすこともある

そしてここからが本題です。
こうした“数字に意味を感じる”という感覚は、実はデザインやブランディングの世界でも非常に重要な視点になります。

たとえば――
・商品名に入っている「7」はラッキーな印象を与える
・ロゴやパッケージに「3つの要素」があると、構成が安定して見える
・ブランド名に数字を入れると、記憶されやすい(例:24/7、ZOZO、47都道府県など)

このように、数字は無意識に働きかける感覚の記号として機能します。
むしろ言葉以上に、直感的に「印象づける力」を持っているのかもしれません。

デザインを考えるとき、「この形は3本にしておいた方が落ち着くかもしれない」
「4つ並べると不吉な印象になるかもしれない」
そんな微細な気づきや感覚は、数字が私たちの心に与える影響そのものです。

 

 

好きな数字に“その人らしさ”が出るように

私たちは日々、あらゆるデザインや表現を通して「誰に」「何を」伝えるかを考えています。
そこで欠かせないのが、“その人らしさ”や“そのブランドらしさ”をどのようにかたちにするか、という問いです。

好きな数字に個性が出るように、デザインや言葉にも「らしさ」はにじみ出ます。
そのらしさを感じ取ってもらうには、情報をただ並べるのではなく、感情に刺さる要素を組み込むことが必要です。

数字が記憶のタグになるように、私たちの作るデザインも、ふと思い出してもらえる何かになれたら――
そんな思いで、日々の制作に取り組んでいます。

 


 

 

ちなみに、私の好きな数字は「36」です。
理由は…特にありません。なんとなく、バランスが取れている気がして心地よいからです。

でも、そういう“なんとなく”が、案外いちばん強い動機だったりもしますよね。

 

 

皆さんの好きな数字はなんですか?
それはきっと、あなたが気づかないうちに育ててきた“自分だけの記憶”かもしれません。

 

 

今回のお話はこの辺で。また次回、お会いしましょう。

Soma

好奇心を刺激するデザインを。

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