「あのカフェは、なぜか落ち着く」
「初めて来た場所なのに、なんだか居心地がいい」
そんな経験をしたことはありませんか?
人が感じるはこの「快適さ」というものは、どこから生まれてくるのでしょうか。
逆に、どんなに有名で立派な建物でも、どこか落ち着かず、早く帰りたくなる場所もあるでしょう。
今回は、“なぜか居心地がいい空間の正体”について、デザインや人間心理の観点から考えてみたいと思います。
居心地のよさは「五感」による総合評価
空間の快適さは、単なる見た目の美しさだけで決まりません。
視覚:照明の明るさや色、配置
聴覚:音楽の種類や音量、雑音の有無
嗅覚:香り、空気の流れ
触覚:椅子の座り心地、温度、質感
味覚:カフェや飲食店では食べ物・飲み物の味も直結します
人は無意識に、これら五感すべてを通じて空間を評価しています。
つまり、「なんとなく居心地がいい」と感じるのは、
複数の感覚刺激がバランスよく整えられている結果なのです。
「人との距離感」が空間の空気をつくる
もう一つ見逃せない要素が、人との距離感です。
満員電車のようにパーソナルスペースが侵されている環境では、どんなにデザインが良くても「居心地がいい」とは感じません。
逆に、程よい距離が保たれ、会話がしやすく、他人の気配をうっすら感じられる程度の空間は、不思議と心地よさを生みます。
これはまさに、空間のデザイン=コミュニケーションのデザインと言えるかもしれません。
居心地のよさは「余白」と「リズム」から生まれる
デザインの世界でしばしば重視されるのが「余白」です。
空間においても同じで、
過剰に情報や物が詰め込まれた場所は落ち着かず、
一定の余白があることで安心感が生まれるのです。
さらに「リズム」も重要です。
たとえば、天井の高さが部分的に変わる、光の当たり方に緩急がある、家具の高さに段差がある――こうしたリズムは空間に動きを与え、居心地のよさを演出します。
科学的に見る「快適空間」
心理学や建築学の研究でも、居心地のよさに関する知見は数多く示されています。
照明:自然光に近い色温度(3000〜4000K)が安心感を与える
音:川のせせらぎやカフェのざわめきのような“ホワイトノイズ”は集中を助ける
自然要素:植物や木材など自然素材はストレス軽減に効果的
実際、オフィスに観葉植物を置いただけで、社員のストレスが減少したという研究結果もあるほどです。
これらの科学的知見を意識して取り入れると、「なんとなく落ち着く空間」を再現する精度は格段に上がるのです。
デザインの現場に活かす視点
我々の仕事であるデザインや映像制作においても、この「居心地のよさ」は大きなヒントになります。
広告デザイン:余白を活かし、視線の休まる設計をする
映像演出:緩急のあるテンポを作り、視聴者に“呼吸”を与える
Webデザイン:文字や画像を詰め込みすぎず、直感的に操作できる余白を残す
空間の快適さと同じく、情報や表現の心地よさを意識することは、相手にストレスを与えない大切な工夫です。
居心地のよさは「デザインの力」
結局のところ、“居心地のいい空間”とは偶然の産物ではなく、
光・音・匂い・距離・余白・リズム…さまざまな要素が織り重なったデザインの結果です。
そしてその快適さは、人の行動や感情を左右します。
カフェで会話が弾むのも、オフィスで集中できるのも、部屋でリラックスできるのも。
すべては「居心地のよさ」という見えない設計が働いているからこそ。
デザインとは、情報や表現だけでなく、人の心を居心地よくすることでもある。
そんな視点を持てば、日常の風景もまた違って見えてくるのではないでしょうか。
今回のお話はこの辺で。またお会いしましょう。